男はつらいよ


先日テレビで食事でも、イベントでも、旅行でも一人で行くアクティブな20代後半から30代の女性の特集をやっていた。そのような女性を「おひとりさま」と世間では呼んでいるらしいのだが、そのテレビに出ていた女性の職場の同僚が「この前”松屋”デビューしたんですよ」と言っていた。かなり勇気のいる決断だったみたいだ。


確かに以前僕の知り合いの女性も、一人で「松屋」に入るには抵抗がある、と言っていた。無論そーじゃない女性もいるのであろうが「松屋」ではなくても、ラーメン屋でも、お洒落なカッフェーなら別だがとにかく一人で飲食店に入る事に抵抗がある女性は意外と多いらしい。僕の場合は全く抵抗は無い。しかし「美味しんぼ」の山岡さんが言っていたと思うが、一人で食べるよりも皆で食べた方が美味しい、という意見には賛成派で、がしかし現実には金銭的にも時間的にも常に誰かと食事をする事は、学生時代ならともかく現状社会人である僕には不可能だ。「おひとりさま」な女性は逆に一人だと他人に合わせる必要が無いので、周りがカップルだらけだと少し気になる事もあるが、あえてその方が良いらしい。


しかしなぜだろう?お洒落なカッフェーなら良いが「松屋」には入りづらいその気持ち。確かに異性には入りづらい場所というのが、世の中には存在する。コミュニケーションは「汁ダク」だけの「松屋」などかなり「男度」が高く、お洒落かしら?なんつってよく見てみるとファーの如くフケを肩に満載していそうなこ汚い男共が徘徊しており、女性にはちと敷居が高いのかもしれない。うーむ。


しかしそんな世の女性陣に忌み嫌われている「松屋」も、本人のアンテナの張り方次第では面白いコミュニケーションが日々生まれている事に気付かされる。ひょっとしたら「吉野家」での事だったかもしれないがま、似たようなもんだ。これは誰が言ったか忘れたが、客のおっさんが「おい!牛メシ並みっ!」と、お前はどんだけハングリージャックなんだ?と疑いたくなるようなキレ方で店員にオーダーしていた事があったという。店員に向かって「おい!牛メシ並みっ!」である。なんて事は無い、などと思う無かれ。これを違うシチュエーションで再現してみよう、するとこうなる。いじめられっ子=店員に向かって、いじめっ子=客が「おい!牛メシ並みっ!」だ。


そう、お前は牛メシ並みの価値(350円)しか無い人間だ!と言っているのである!


バカ、アホでは無い。牛メシである。BSEである。言うなれば「おい、牛メシ野郎」である。「おい牛メシ野郎パン買って来い」である。一体牛メシ並みの人間ってどんな人間なんだ?そもそも人間なのか?言った方は言われた人間の気持ちがわかっているのか!?イジメの元凶、何気ない一言が人を傷つける事例の典型だ。こんなひどい罵詈雑言、差別用語を日常的に浴びせられる職場もなかなか見当たらない。人の命は地球よりも重い、なんつって教育を受ける時代に堂々と人権無視な発言が横行している。ストレスが半端では無いのは容易に想像出来る。差別だ、これは紛れも無く差別だっ!頼むから彼らの時給を上げてやってくれ!


そうか、女性にとっての「松屋」とは、僕にとってのお洒落なカッフェーなのであろう。そもそもコーヒーが飲めない僕にとっては、その都内某所にあるとまことしやかに囁かれているカッフェーなど、理解出来ない危険極まりない場所。そこに集う人々は、セクースなんてフリーダム、熱くなるなんて私らしくない、クールに行こうぜベイベーなんつって世の中を冷めた目で斜めから見ている類の人間と理解している。そんなまるでとある十月の暖かな木漏れ日溢るる午後の紅茶的な光景に、ユニクロな僕が付け入る隙など微塵もあるハズも無く、メニューを見てはそれがどんな飲み物なのか?いや、そもそもそれが飲み物を表しているのかどうかも判断できない幾何学的な文字の羅列されている摩訶不思議な世界。怖い怖い理解出来ない。


ところで余談ではあるが「ジャイアン」と双璧を成すいじめっ子である「ブタゴリラ」、そのあだ名でいいのか?あとこの前「馬鹿豚屋」という名のラーメン屋(多分)を発見した。


と、話は少しズレてしまったが、問題はやはり異性が入りづらい場所があるが、女性よりも男性の方が入れない場所が多い、という事である。許されるか許されないかで言うと僕の知りうる限り、日本国内において女性が入ったら許されない、なんて場所は無いと思う。男が女性の下着売り場にいても許されるかもしれないが、恐らく変質者のレッテルを貼られ近所でも評判になって道もおちおち歩けなくなり、いずれ一家離散する羽目になる事請け合い。それならまだしも女子トイレや女風呂に入った暁には即刻逮捕され牢獄へぶち込まれ、牢獄の中でマッチョな兄貴に更にぶち込まれる事は目に見えている。しかし女性が男性の下着売り場にいた所でそれは特別な意味は無く、ましてや(年齢にもよるが)男風呂に入って来ようものならバカな男共は狂喜乱舞、我先に見せたがる汚らしい裸祭りが始まってしまう。なぜだろう?


最近電車にも男性の立ち入る事の出来ない「女性専用車両」なる物があるが、「男性専用車両」は無い。僕は絶対に乗りたくはないが、それでも「男性専用車両」って、あってもいいと思う。満員電車で周りに女性がいる場合、両手を挙げている男性はきっと多いハズ。そんな人には有難いのではないだろうか?


そーいえば以前Gacktが、電車でいわゆる“痴女”に遭遇し、ケツを触られたが何も出来なかった理由として「だって男がやめて下さいって言っても説得力ないでしょ」的な事を言っていた。そりゃそーだ、逆に「何言ってんの?アンタが触ったんでしょ」なんて言われたら、ババアだとしてもこっちが捕まってしまう。もし僕ならなされるがまま、終点までどころか折り返してでも付き合う覚悟は常に持ち合わせているのだが、あいにくそんなプレー…いやマル秘ハプニングにはまだ遭遇出来ていない。


しかし実際にその決して立ち入ってはならない異性間の垣根を取り払い、仮に理想の世界が実現してしまったら、きっと僕はデープキスの舌よろしくベロリンチョと侵入してしまうのであろうが、僕のまだ見ぬ愛娘がそんな被害に遭ったらと考えると、決して手放しでは喜べない。


この様にやはり世の中には、男が決して立ち入ってはならない、踏み越えてはならない一線という見えない壁が存在する。男はつらいよ

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